世界を浄化する救世主的存在で、天族と交信する事ができ、
高い霊応力を持つと言われている。
また、天族と契約を交わし、その器となった者の総称。
器となった者(導師)は天族の力を自在に行使することができるという。
天族の存在と同様に伝承となるほど、失われて久しい。
導師の契約
導師は天族と契約を交わして自らの体を天族を棲まわす「器」とすることで常人を超えた身体能力と天響術を操る力を得る。
契約には高い霊応力と、なにより穢れなき純真な心を持っていることが条件となる。
導師が天族と契約を結び、その身を器とすることを「輿入れ」と呼ぶ。
契約は天族が「主」、導師が「従」であり、導師側から一方的に契約を断ち切ることはできない。
導師の才能によっては同時に複数の天族と契約することも可能である。
四属性の天族を揃えるのが理想とされるが、
四人の天族を受け入れるほどの資質を持った導師は、歴史上も滅多に存在しない。
民衆から見た導師
導師とは、誰もが知っている伝説の救世主である。
人の力の及ばない災害が多発する「災厄の時代」にあって、
導師の出現を待ち望む声は世界中で高まっている。
だが、スレイが実際見せる一瞬にして地形すら変化させてしまう導師の力は、
時に、救った人々に感謝以上の恐怖を与えてしまう。
霊応力を持たない一般人には、導師の力もまた、
憑魔と同じ理解不能な「異常な現象」に見えてしまうのだ。
導師の力をもってしても、そう感じる人の心を自由にすることはできない……。
ライラの誓約
誓約とは、自らに特別なルールを課すことで、特殊な力を得る儀式である。
自身の能力を超えた力を手に入れることができる反面、ルールを破った時は、
おそろしい反動に襲われる諸刃の剣でもある。
ライラは、この誓約を使って穢れを祓う「浄化の炎」の力を得ているらしい。
どんな特別なルールを課しているのかは不明。
彼女の過去と関わりがあるようだが、誓約に関する話題になると、
ライラは不自然極まりない奇妙な言動で誤魔化そうとするため、
スレイたちも色々な意味で気の毒に思い、深く追求しないことにしている。
従士
導師の配下として、その活動を補佐する人間を従士と呼ぶ。
導師になれるほどの霊応力をもたない者も導師と契約することで憑魔を知覚し、
天響術を操って戦うことができるようになる。
アリーシャは、スレイと契約し従士となる。
しかしその力はあくまで導師スレイを源とする限定的なものである。
真の導師が姿を消して久しい現在、導師は半ば御伽噺的存在となっており、
その存在と力を疑う者も多い。
だが、それでも導師は民衆の潜在的な崇拝対象であり、
いつの時代も為政者たちにとって無視できないやっかいな存在であった。
導師となったスレイがアリーシャと親しいことを知ったハイランドの大臣たちは、
スレイを警戒し、王宮に召還する。
一見華やかな王宮で、どうすることもできないアリーシャの悲痛な立場や、
政治の実権を王族に渡すまいとする大臣たちのどす黒い疑心に触れたスレイは、
イズチにいた頃には思いもしなかった人間社会の裏面に巻き込まれていく。
それは、人の「穢れ」に係わる導師にとって逃れられない宿命なのだった。
天族は、同族間で特別な力の契約を結ぶ場合がある。
契約の主となる天族を主神、その下に連なる天族を陪神と呼ぶ。
陪神となった天族は主神と行動を共にしなければならないが、
主神が持つ固有の力を共有できるようになる。
ミクリオやエドナは、ライラを主神とする契約を結び、その陪神となる。
現在、陪神をもつ天族は数少ないが、古代には数百の陪神を従えた。
まさに神の如き天族も存在したといわれている。
神話に伝わる、人と天族の歴史が残された古代遺跡を巡り、
その謎に迫った人物が記した旅の記録。
この書には神話として語られる「人は天族を知覚し、共に暮らしていた」
という理想世界が太古には実在していたのではないか……という仮説が綴られている。
人間とは異なる神秘の種族で、グリンウッド大陸の信仰の対象として語られる存在となっている。
清浄な人や物質を「器」として宿すことで、自然を操る天響術を使用することが出来ると言われている。
通常の人間には見えず、霊応力の高い人間だけが認識出来る存在。
不老不死に近い寿命を持つとも言い伝えられている。現在も、人間からは感知できないだけで存在している。
スレイとミクリオは、赤ん坊の頃から一緒に育った幼馴染である。
スレイは「人間」、ミクリオが「天族」であることは互いに理解しているが、高い霊応力を持つスレイには常にミクリオが見えるため、
二人が種族の違いを意識することはなかった。
自由闊達なスレイと冷静に思案するタイプのミクリオは、互いを補う良いコンビだ。
だが、共通の趣味である遺跡探検で、どちらが先に新しい発見をするか競いあったり、
なにかにつけて議論を戦わせたりと、親友であると同時に一番負けたくないライバルでもある。
イズチの村から出た事が無かった二人は、
アリーシャとの出会いによって初めてスレイ以外の「人間」と対峙し、まだ見ぬ「世界」に目を向けていくことになる。
「天族」は通常の人間には見えず、霊応力の高い人間だけが認識する事ができる存在である。
初めてスレイ以外の「人間」アリーシャと出会ったミクリオは、
スレイの前に割って入り、アリーシャの顔をのぞきこむ。
だが、残念ながら彼女にはミクリオの姿が見えていないようだ。
目の前でスレイとミクリオが話をしていても、
ミクリオの声はアリーシャには届かず、スレイが奇妙に一人芝居をしているように映るだけ。
そう、これが普通の「人間」の反応なのだ…。
自室にいるスレイ。家は石と木材でつくられており、簡素ながら居心地が良い。
壁には岩を繰り抜いた棚があり、探検で発見した自慢の戦利品が並んでいる。
「天族の社イズチ」は、山奥遥か雲海の上につくられた村であり、穏やかで清浄な空気に包まれている。
ここがスレイとミクリオの故郷であり、二人は美しい自然と遺跡を駆け回って育ったのである。
大陸の中央部を占めるローランス帝国は、
天遺見聞録によれば「アスガード興隆期」のものを始め、多くの古代遺跡が残る土地である。
さらには天族信仰を掲げる教会が、大きな力をもち、民衆の支持を集めているともいう。遺跡探索と導師の使命、その両方の期待に胸をふくらませるスレイ。
だが、導師の出現はローランスにも伝わっており、騎士団はその力を危険視し、
教会は異端者として取り締まろうとしていた。
しかも、「導師と同種の奇跡を体現する者」が存在するという噂まで聞こえてきて……。
大陸最強の大国を訪れたスレイは、今まで以上の試練と、
世界の現実に直面することになるのであった。